独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
パーティーは午後からだというのに、姉は誰より早く起き出していた。
その後、皆が朝食を食べ終えて今日の段取りを確認し合った。

今朝の煌生さんは雑炊を食べてくれた。熱も随分下がり、顔色も昨日より良くなっている。

「……迷惑をかけてごめん」
食べ終えた煌生さんが小さな声で呟く。普段の彼とは違う弱々しい姿に胸がツキリと痛んだ。

「婚約者だもの。大変な時に助け合うのは当たり前でしょ。そんなことを気にせずに煌生さんは身体を治すことだけを考えて」
わざとはすっぱな調子で私が言うと、彼が苦笑する。

「食材の買い出しとか大変じゃなかった?」
「大輝さんと柿元さんが手伝ってくれたから大丈夫」
キッパリ私が言うと、彼は少し安心したようだった。

「今日のパーティーも負担をかけてしまうけれど、すまない」
申し訳なさそうな顔の彼。そんな顔はこの人には似合わない。

「もう、そんなこと気にしないで! 婚約者なんだから当たり前です! むしろパーティーのことを黙っていたことを私は怒っているんだから」
ぷうと頬を膨らませて私が抗議すると、彼は再び苦笑した。

「驚かせたかったんだ、ごめん」
「許してあげる。その代わり今日は私の言うことを聞いて安静にしていてね」
交換条件を持ち出す私に、彼は苦笑しながらも頷いてくれた。

「パーティー、橙花は無理をしなくていいから、楽しんでおいで」
意味深に微笑みながら彼はそう言った。
楽しむ余裕なんてないと思うけれど、と考えながら私も笑顔を返した。
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