アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
『らしい』とは、どういうことなのか。
なぞなぞのような返事を聞いても朱鳥にはさっぱりわからない。

どう答えたらいいのかわからず、『そうですか』としか返せなかった。

――いっそ兄くらい突き抜けていれば、無駄に迷うこともなく生きていけるだろうに。

そう思いながら朱鳥は悲しくなった。

結婚なんかしなくてもいいと言いながら、それでもどこか不安で言い知れぬ寂しさが心の奥で疼く。

なにもかも中途半端な自分。

それが辛く悲しい。


――もっと強くなれればいいんだけど……。

そんな妹の沈む心を知ってか知らずか、薄っすらと瞼を上げた蒼絃はうつむく朱鳥を見つめ、そっと横笛を手に取った。

絹のように繊細でなめらかな笛の音が響く。

誘われるように蒼絃の袖から顔を出した式神が、くすくす笑いながら明るい光を放ち、

朱鳥を囲み包んでいった。
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