隣は何をする人ぞ~カクテルと、恋の手ほどきを~
ノーメイクになってしまった私は、どう考えても五十嵐さんより出かける準備に支度がかかる。「急がなきゃ」とあわてだした私を制するように、五十嵐さんが言った。

「莉々子ちゃんは、素でかわいいんだから、薄化粧でいいんだよ」
「でも、子供っぽくみられません?」
「子供ではないよ、君は。十分」

なんとなく、いやらしい言い方だと思ったのは、気のせいだ。

「そういえば、あの、……さっきの服、変でした?」
「……全部言わなきゃだめ?」

だいたいなんでも褒めてくれる彼が、そう思わなかった理由があるなら、ちゃんと言って欲しい。私がうん、と頷くと、照れた様子で理由を教えてくれた。

「きれいな足が全部隠れて残念だな……ってすげえオヤジ臭いこと考えて自己嫌悪」
「だから、五十嵐さんはオヤジではないですって。かっこいい、私の大好きな人です」

それから私は、ナチュラルメイクに膝丈のスカートとニットに着替え、ヒールの低いショートブーツを履いて、五十嵐さんと腕を組んで外に出た。
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