黒縁眼鏡と銀縁眼鏡
思考を巡らせようとすると、外からひとりの男が入ってきた。

「気分、どう?
あたま、痛くない?
……すぐに朝ごはんにするから。
ちょっと待ってて」

そう云うと男はキッチンで作業を始めた。
待っててと云われても、なにか落ち着かない。

「落ち着かない?
……だよね。
ここ、座りなよ」

勧められるままにキッチンに彼が置いた椅子に座る。
そのとき初めて、彼が眼鏡をかけていることに気が付いた。

「この眼鏡って……あなたの、ですか?」

「そんなの持ってたんだ。
……残念ながら、違うよ」

黒縁眼鏡の奥の目が苦々しげに歪められたかと思ったら、次の瞬間にはそんなことなどなかったかのようににっこりと笑う。

「……ここはどこですか?」

「僕の叔父の別荘」

「あなたは……?」

「キタジマユウマ、トモエの彼氏」
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