当たり前です。恋人は絶対会社の外で見つけます!
前に皆でいる時に家族の話をしたことがあった。
大場が話していたのを聞いた。

「二個上の兄貴がいる。もうすぐ義理の姉もできそう。」

お兄さんが結婚するという話。

「結構コンプレックスを刺激する兄貴で、昔はどうしても追いつけないって思ってたけど、今は諦めた。敵わないって。当たり前だよな。二年先に生まれたんだから。」

そう言ってた。

器用そうに何でもこなして見える大場でも、そう思う相手がいるんだとしみじみ思った。

「ああ、妹が居たら絶対可愛がるのになあ。欲しかったなあ。甘えてくるような可愛い妹。」

そう言って照れてた顔で、ちょっとだけ目が合った気がした。

・・・・そうなんだ。もしかして・・・・。

なんだかんだと構ってくる。
甘えたり絶対しないのに、とうとう相談は俺にしろなんて言う兄貴面をし始めた。
妹を同僚に求めるの?
呆れる。勝手に期待しないで。
妹・・・・。なりたいわけないじゃない!!

馬鹿な奴。

お酒が減って次を頼んだ。
やはりちょっと高いから、ゆっくり味わって飲む。
世話焼き兄貴の奢りだろうか?
二杯目も美味しい。

唇をぺろりと舐める。

息を吐くと自分の吐く息まで甘くなってる気がする。

静かで座り心地のいいソファ。
いいじゃん。
眠くなりそう。
落ち着く・・・・・・って何で。
背中を預けそうになって慌ててしゃんと背筋を伸ばした。

危ない。このソファが危険なんだ。

「今、すっごい寛ぐところだっただろう?」

笑顔で聞かれた。
見られた、バレた。

「ソファが気持ち良かったからです。」

「そうか、良かったな。」

笑顔で言われた。
いつも揶揄ってくるのにたまに真面目に返される。
その辺がよくわからない。
じっと見てると視線をそらされた。

「お昼食べたの?」

「いや、朝も食べてない。」

「何か食べれば?空腹で飲むと酔うよ。」

「珍しいな、・・・・・心配してくれてる?」

「・・・・置いていくから。酔ってても寝てても、時間が来たら置いてくからね。」

そう言うとじっと見られた。

「何?」

ポケットから財布を出して保険証を見せられた。
裏に書かれた住所を。

「タクシー呼んでここに一緒に連れて帰ってくれると嬉しい。明日は日曜日だから泊めてやるよ。」

保険証をしまった財布をもとのポケットに戻して。
そうやって今度は揶揄う。

「知らない。それは私の役目じゃないから。」

他にいるはず。
本当の妹なら知りませんが、私の役目じゃないことは確か。

「遠慮はいらないよ。」

わざと近寄って言われた。

「一切してません。」

すぐに答えた。

「しょうがない。じゃあ、ちょっと食べるかな。何がいい?サンドイッチだったら少しぐらい手伝う?」

お腹いっぱいだと言うのに。

「じゃあ、そうしよう。」

勝手に決めて頼まれた。知らない。

・・・・そう思ったのに、5切れのうち2切れ手伝った。
おかしい、調子が狂う。

「美味しい。」

満足して自分から言ってしまった。
それを聞いて満足そうな顔をした大場。

何がうれしい?

ポテトはさすがに無理だった。

なんだかすごくお腹いっぱいになってお会計してもらった。
半分出すと言っても聞いてくれなかった。

「ありがとう。」

「少しは元気になったか?」

だから奢り?だいたい、元々元気でした。
そんなに不幸オーラが見えてたの?逆に聞きたい。
顔を見上げた。
そう思ったら手が出てきて頭に手を置かれた。

「良かった。」

勝手に何かを思ったらしい。
すぐに手はなくなった。
大きな手のひらだった。

仲のいい兄妹だったら、確かにこんな感じもあるかもと、ちょっとだけ思った。


同僚を兄と思う・・・・・わけないし。


よくわからないけど奢ってもらって別れた。

部屋に帰るころにはいろんなことがどうでも良くなっていた。

人生なる様にしかならない。
立ち止まるより、歩け、進め。

その先にきっと幸せがあるから。
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