一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~

ぱちり、とまばたきをして目を丸くする私。


「私との約束が、そんなにモチベーションになるんですか?」


「当たり前でしょ。その分、会いたくてしょうがなくなるけどね。」


これが偽恋人の会話であると、誰が信じるのだろうか。少し照れながら、私はうーん、と考え込んだ。


「じゃあ、映画鑑賞はどうですか?スイートルームにある大きなテレビで、一緒に何か観ましょうよ。」


「ん、いいね。決まり。」


次の約束に心が跳ねる。

なんだかんだ、楽しみになってきた私も私だ。


「今日はありがとうございました。三日後、また。」


「うん。」


挨拶を交わし、ガチャ、と車のドアを開ける。…と、その時だった。


「美香」


「?」


不意に名前を呼ばれ振り返ると、すっ、と首筋に彼の指が触れた。


ちゅっ。


後頭部を優しく引き寄せられるようにして重なった唇。一瞬だけ掠め取られるようなキスに、目を見開いて硬直した。

彼の形の良い唇が、くすり、と弧を描く。


「…ふふ。…ちょっとカサカサ。」


「!!」


「おやすみ。」


ブォン…!


遠ざかっていく彼の車。ざわざわと騒ぎ出した胸が落ち着かない。

普通、別れ際にいきなりキスするか?しかも、あんな手慣れたように。照れもせず。


『…ふふ。…ちょっとカサカサ。』


(〜〜〜っ!!!!)


私は視界から消えていく彼を見ながら、羞恥心と興奮と熱情、その他諸々の感情が込み上げて、言葉にならない呻きをこぼしたのだった。

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