大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

健さんは智奈美の驚く姿を楽しみにしていたみたいだし、ずっと内緒にしていたのだろう。

「…いろいろと複雑なんだけどね」

「いろいろ複雑って、気になる。今聞きたいけど菜生に紹介したい人がいてね…奏くんに内緒で来てもらったからきっと驚くと思うんだ!うふふ、早く奏くん来ないかな」

リビングに案内されると、奏の知り合いでもあるらしい人は、キッチンに立っていた。

「はじめまして…西園寺 結衣です。今日は仲良しグループの中に突然お邪魔してごめんなさいね」

ニコリと笑っているが、どこか棘のある話し方に第一印象はあまり良くない。

それに結衣って…

前に、奏にかかってきていた電話の相手もそんな名前だったと思い出しながら、智奈美の知り合いなら仲良くしなければと笑顔を作り自己紹介。

「いえ、人数が多い方が楽しいと思うので、気にしないでください。私…」

「伊東 菜生さんでしょ…お話は智奈美さんから聞いてます。高校の時からの親友だそうですね」

「…はい」

ちゃんと自己紹介させてもらえない事にムッとなりながら智奈美を見たが、智奈美は気にならない様子で、話を進めていく。

「結衣さんとは、お料理教室で知り合ったの。私、料理下手だから結衣さんにはいろいろ教えてもらって仲良くさせてもらってるの」
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