大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

俺の惚気に、呆れ顔の健が肩をポンポンと叩いた。

「やっと遊び人も卒業か」

「そうだよ、それなのに」

イライラして頭を掻き毟る俺。

「手も出していないなら、思わせぶりな事でもしたんじゃないのか?」

「するか!丁寧にお断りしたのに、仕事場もマンションもどうやったのか知らないが突き止めて、待ち伏せされる俺の身にもなってみろ」

「まぁ、俺も相手にせず諦めるのを待つわな」

「だろ!それが俺だけなら我慢できた。俺が相手にしなかったせいで菜生がひどい嫌がらせを受けたなんて俺自身許せない。今日、お前と智奈美ちゃんに相談しようと思ってた矢先に、これだ」

「ひどい嫌がらせってどんなだ?」

「…酷い言葉をあびせた手紙とか、俺とあいつが写ってる写真を菜生のところだけ切り刻んである。そんな事が何日も続いてて、トドメが扉に貼り付けた写真の菜生の顔をピックか何か尖った物で扉ごと刺してズタズタに…さすがに、あいつも怖がって今は俺のマンションに連れてきた」

「それは…ひどい‥な」

「それをしたのは、多分、その結衣って女だと思う」

「はあっ!?」

今度は健が逆に驚いている。

「見た感じ、お淑やかでそんな事をしそうじゃないけど」
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