大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

菜生を一晩中抱いた俺は、程よい脱力感に深い眠りについていた。

側にいた抱き心地のいい体のせいで起きたくないのに、起きろと俺を起こす女。

「…奏、ほら出たら!」

投げられたスマホの音を頼りに探りあて、画面を見ても一瞬、誰だか思い出せない。

「誰…ゆい?…あぁ……」

あの時の女か…

来るもの拒まない俺は、記憶にないのはよくある事で、思い出せたのは健達の結婚式に参列していた女だからだった。

しつこくて面倒くさい女だった気がする…

「私、シャワーしてくるから、ごゆっくり」

なんだよ…
俺は、お前にとって気にもならないセフレ以下か?

抱いても、男として見てもらえてない気がしてムカムカしてくる。

電話してきた女は、一方的に話してきて、俺はただ聞くだけのムダな時間が過ぎていく。

一方的に話を切り上げ電話を切ってやりたいが、智奈美ちゃん側の知り合いらしく、面倒くさい事になりそうで切れずにいる。

そこに、菜生の濡れた髪をタオルで拭く姿に見惚れて、電話口の女の話声なんて雑音にしか聞こえなくなり、朝ごはんの支度をしだす姿に、こんな朝も、いいなぁ…なんて思っていた。

だが、俺を幻想から引き戻す女の声に、面倒くさくなる。
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