大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

クンクンと耳裏辺りの匂いを嗅ぎ、唇を首筋に沿って撫ぜていくのも毎回だ。

くすぐったい…

「もう、毎回やめてよ」

「やだね…この匂い好きなんだよ」

体を抱きしめたまま、勝手に部屋に入ってきて、床に座ると当たり前のように奏の膝の上に座らされている。

本当、なんなんだろう?

あの日から、奏は別人のように甘くなった。

恋人同士でもないのに…

「ねぇ、なんでここに来るの?」

「ハァッ、それを言うか!今だにおまえは連絡先を教えてくれないし、会う方法はここに来るしかないだろう」

「別に抱きたいなら来てもいいけど、ただ寝るだけなら家に帰ったら?」

「お前、やっぱバカだろ!会いたいから来てるって言ってるのに、抱くのはその雰囲気でだな…」

もごもごしだす奏。

「あーもう、兎に角、俺の連絡先教えてあるのに一度も連絡して来ない、家も知ってるのに会いにも来ない薄情な奴に会う方法は、俺が来るしかないんだよ」

「一週間に何回も会わないといけない?奏、色々用事あるでしょう?」

ハァッーと大きなため息の奏。

何度か、奏にかかって来る電話。

話し声はみんな女性だった。

その度に胸がチクンとなるけど、前のように電話がかかって来たからといって奏は私を置いて出ていかない。
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