恋の始まりの物語
途中のコンビニで、首尾よくお酒とおつまみを手に入れた。

湯川の部屋へ向かいつつ、ホクホク顔の私を呆れたように見て、湯川が言う。

「お前、リオンであんなに食ったのに、まだ食うのかよ!」

「なにさ、いつものことでしょ。
食べながらじゃないと飲めないんだって」

「塩でも舐めとけ!」

「野菜食いたいの!」

家にあったキュウリを5本持ってきた。軽くめんつゆに浸けて、漬け物擬きを作る。
後は、お菓子。

ふと、気がついて、隣の湯川を見上げる。
軽く180㎝以上あるだろう。
女としては背の高い方の私が、見上げないといけない。

「……あんた、割と元気ね」

もっと落ち込むかと思った。
大好きなまりあが、嫁に行くんだよ?

「ああ、なんかお前がまりあに『嫁に来い』って言ってたの聞いて、どうでもよくなってきた」

「なんだそれ」

ぷっ、と吹き出した私の髪を、いきなり大きな手がぐちゃぐちゃにした。

「なっ、なにすんだ!」

「まだ濡れてんじゃねぇか。ちゃんと乾かせよ、ズボラ女!」

「うっさい、急かしたの誰だよ!」

「俺だな!」

二人してゲラゲラ笑いながら、湯川の部屋に入る。
ひょっとして無理してんのかな、とか思いつつ。
台所を借りてサクサク漬け物擬きを作って、リビングダイニングのテーブルに乗せた。

< 17 / 43 >

この作品をシェア

pagetop