恋の始まりの物語
湯川の部屋の前に着いたタクシーに、やはり多目のお金を払って、湯川はひどく急いで私の手を握り、エントランスへと導いた。

「や…部屋はちょっとマズイのでは……」

私の台詞を無視して、湯川はどんどん自分の部屋へと私を引っ張る。

その切羽詰まった様子に驚いてしまった私は、そのまま湯川の部屋へと入ってしまう。

ガチャン、と鍵がかかった音がしたと同時に、湯川は私の唇を奪った。

激しい、熱い。
懇願するようなキス。
何を…何をそんなに求めてるの?

唇が少し離れた。
でも、軽く触れたような状態で。
湯川が、心の底から絞り出すような切ない声で。

「美玲、すきだ。
好きすぎて、狂いそう。
俺、美玲が側にいてくれないと、ダメになるよ?

お前を手放すのなんて、もう無理だから。
結婚して」

はい?!

キスでぼやけてしまった意識が、いっぺんに戻ってくる。

「いやいや、付き合ってもいないのに結婚とか言われても」

「俺たちもうずっと一緒にいたろ?
付き合うとか、いらなくね?

俺、5年も我慢してたんだぞ。
今更無理、手放せない。

俺は裏切らないし、お前をずっと愛し続ける自信がある。
お前、俺を信用に足りないヤツだと思うか?」

「それはっ…思わないっ…けど……」

「もう押しきらせてもらう。
美玲と結婚したい。
美玲愛してる。
美玲と子どもをつくって、幸せな家庭を作りたい。
美玲すき、大好き…」

恥ずかしくなるような言葉の羅列に、私は早々にギブアップした。
湯川の胸を軽く叩く。

「あーもーわかった!!
ちょっと落ち着け!!」

私は叫んだ。
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