理想婚の進め方
昼飯を食べ母と2人で片付けをしていた時に耳を疑う言葉が聞こえてきた。

「若菜ー お見合いしない?」

全て片付けソファに座り母を凝視した。
突然向けられた言葉を数秒使って飲み込む。
なんでと呟いた口は声を通さずに過ぎ去る
口の動きを読み取ったのか、母こと佐野香苗はニッコリ笑いながら詳細を伝えてきた。

「今度のお父さんの取引相手の息子さんがねー いい歳で彼女もいないから見合いして結婚させようかって。」

確かに一応社長令嬢だから恋愛結婚できるなんて考えてなかったけどちょっと早い気がする。
若菜は母の正面に正座して相手のことを詳しく聞き出す。

「お見合いはいいけど相手はどんな人なの?」

母はうーんと言いながら目を瞑って考えている
突然だが私の母はとんでもない美貌の持ち主だ。50歳の今でもシワひとつない顔。目は大きく鼻は高くて小さいしその上ボンキュッボンなのである。観察している今でさえ全てが完璧だ。
それがなんの迷いなのか平々凡々の父と結婚したのだろう。謎だ。前に言ったら怒られてしまったので墓場まで持っていくことにする。
そこまで考えて母を見るとこっちを見ていた。
すごくニヤニヤした顔で。

「な、なに?」

ちょっと、いや、結構怖い。思わず口が引きつってしまった。
1度咳払いをし気を引き締めて問いかける。

「どういう人なの」
「若菜の理想の相手とピッタリの人よ」
「理想の相手って…」

(精悍な顔立ちで、でも熊さんみたいな包容力がある人でハーフで無口でって
こんなに矛盾してる人いないでしょ。)

母に疑いの目を向けると、さらに深く笑っている。

「とりあえず会ってみてからよ。断っても構わないし、私も結婚までなんて考えてないわ。」
「相手の写真見せて頂いたけど、まさにだったから1度と思って」

そこまで聞いて1度息を吐き、母に「わかった」と一言告げ自分の部屋へ向かう
部屋に入ってベッドにダイブしそのまま枕に顔を埋めて泣きそうな顔を隠した。

(理想の相手がほんとにいるとしても、その人が私のことを愛してくれる保証はないよ)

昔、彼氏が何人かいなかったわけではない。でも最後には必ず若菜の母を好きになって別れを告げていく。
親に紹介しなければいい話ではあるけれど、若菜は将来政略結婚する可能性が少なからずあるため、念の為だ。
初めての彼氏を親に合わせた時に彼の目が変わったのを感じた。
それから1ヶ月ぐらいして若菜の母を好きになってしまったと言って別れを告げられた。気づいていたからか好きな気持ちも無くなっていたから「うん。」と言って別れた。それから3年以上経って3人彼氏が出来たが、同じ理由で別れた。大学に入ってから何度か告白をされたが全て断ってきた。友人達には可愛いと言われるが生まれた時から母が近くにいてお世辞にも自分は可愛いとは思えないな。

(私には父の遺伝が大きく出てるけど、兄様は母の遺伝のためか恐ろしいぐらい顔が整っている。中性的な美貌だよね)

若菜の容姿は目はそこそこ大きくタレ目で鼻は高くも低くもない。唇はふっくらしているが顔が丸顔で目立たない。胸はそこそこあるが同時に若干ぽっちゃりである。友人達に言わせるとぽちゃ感がいいと言われるが、母のようになりたかった。一言で言ってしまえば平凡である。
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