その悪魔、制御不能につき



レタスをパリパリとちぎってボウルの中に入れているときにふと完全には目覚めていない状態のときに社長から何か言われたことを思い出す。いつものことといえばそれまでなんだけど、今朝は少し長いこと話していたし何かあるのかもしれない。あとで連絡入れておこうかしら。


自分で作ったブランチを食べ終わって食器を片付ける。ここで過ごすようになって仕事の量が減った代わりに料理の腕が上がったような気がするわ。自分だけならまだしも変なもの社長には食べさせられないものね。


書類仕事を順調に消費しつつ、また社長がら仕事をもぎ取ってこないといけないな、と思っているとインターフォンが鳴った。食材とか通販でお願いしてるから珍しくはないんだけど…今日って何か頼んでたかしら。


となると社長が頼んでいたものかも。あぁ、朝に何かしら言ってたのはこれかもしれない、とペンと印鑑を片手に玄関に向かう。


油断と言えばそうなのだろう。でも社長の家に来る人なんて今まで頼んでいた通販を持って来る人だけだったし、そもそもセキュリティーがしっかりしているから社長の知り合い以外が来るとも思えなかった。


ガチャ、と鍵を開けて玄関の扉を開くと同時に痛いぐらいの力で部屋から引きずり出されて口を布で塞がれる。突然のことすぎて抵抗するという選択肢すら浮かばずに硬直して、鼻を刺す臭いにまさか、なんて思いながら私は意識を失った。


< 38 / 70 >

この作品をシェア

pagetop