あの時からずっと、君は俺の好きな人。
そしてなっちゃんから受け取った体温計を脇に挟む。ピピッと電子音が鳴ったあと、画面に表示された数字は……。


「ーーあちゃ。38.1だって」


私は苦笑を浮かべて言った。


「あらら……今日の慰霊登山は無理だね。お休みしよ」

「……うん」


パパとママに悪い気がしたが、こんな状態で登山はさすがに無理だ。私はか細い声で承諾した。


「私も看病するから登山は行かないね。病院行く? 何か食べれる?」

「え、いいよそこまでしてくれなくて。なっちゃんは行ってきて」


なっちゃんだって姉である私の母を弔いたいだろう。それに、本当に他人に看病されるほどひどい状態ではなかった。


「でも……藍のこと心配だよ」

「本当に大丈夫だよ。動けないほどじゃないから。ーー私もなっちゃんも行かなかったら、パパとママが心配するよ」


私がそういうと、なっちゃんは少し黙ったあと、真剣な面持ちで頷いた。
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