あの時からずっと、君は俺の好きな人。
どうしても知りたくて、必死に記憶をよみがえらせようと脳をフル回転して頑張ったこともあったけど、やっぱり思い出せず、徒労に終わった。

何も思い出せない私に、医者や事故の調査委員から「きっとあまりにショックな出来事だったから、人間の防衛本能で忘れようとしているのだろう」と聞かされたことがある。

本当にそうなのかもしれない。例えば両親の無残な死体を見ちゃったとか、事故直後は生きていた人達が死んでいく姿とか。

まあ、そんな記憶だったら私の方だって思い出すのはごめんだ。

ーーだけど。

何か大切なことを忘れているような……何故か、そんな気がする時がある。

しかし無気力症候群で抜け殻の私は、しばらくすると「まあいいや」と思い、次またこの夢を見るまでどうでもよくなってしまうのだ。

ーー6年間何度繰り返したことか。

ーーと、寝ては泣いて目が覚め、寝ては泣いて目が覚めといった1日だったが、夕方にはあっさりと熱が下がり、頭痛も吐き気も収まってくれた。
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