あの時からずっと、君は俺の好きな人。
2018年7月 あのとき



ーー痛い。

気がついた瞬間感じたのは、右の膝下に感じる激痛だった。

その痛みから逃れようと動かそうとしたが、何か重いものに挟まれていたようで、微動だにしない。

鼻腔を掠めたのは、湿った土の匂いと新緑の清々しい香り。

仰向けに倒れている私の視界には、青々と葉を生い茂らせた樹木たちと、その隙間から見える青空しか映らなかった。

直前の出来事を、いまだ霞がかった意識で思いだす。

新幹線が揺れたかと思ったら、ジェットコースターのような勢いで、森の中を車両ごと落ちていった。

窓側にいた私は、落下している途中で窓を突き破って車外に投げ出されたような気がする。

自由に動く腕を眼前に持っていくと、細かい切り傷がたくさんあった。

ーーパパとママはどこへ行ったのだろう。探さなきゃ。きっとどこかへいるはずだ。

しかし、探そうにも挟まれた足が動かない。

上半身を少し起こして足元を見てみると、金属製の何かの残骸のようなものが、私の下半身に覆いかぶさっていた。ーー新幹線の車体の一部に見えた。

次第に足の痛みが消えてきた。ーー感覚がない。

そういえば、どこかで聞いたことがある。長時間圧迫された手足は、切断することもあるって。
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