あの時からずっと、君は俺の好きな人。



そこで目が覚めて、私は飛び起きる。寝ていたはずなのに、興奮してしまっていたようで息が荒い。汗もびっしょりかいていた。

周りを見渡すと、隣のベッドには美結が心地よさそうな寝息を立てていた。ーーそうだ。いまは修学旅行。

私は六年前の、事故の直後の夢を見ていたのだ。

夢は、忘れていた記憶だった。今までの私は、新幹線が脱線してから、病院のベットで目が覚めるまでの間の記憶が抜けていた。

その抜けていた記憶を、私ははっきり思い出したのだ。

ーーそうだ。私は新幹線の車内から投げ出されたあと、あの男の子に助けられたのだ。ーーあの男の子。

見紛うはずがない。6年前だから、今より幼いけれど。あの男の子は……間違いなく彼だ。私が現在、恋をしてやまない彼ーー水野蒼太くんだ。

しかし彼は何故あそこにいたのだろう。あんな山奥、人の往来があるとは思えない。

考えられるのは、彼も私と同じ新幹線に乗っていたということ。

彼も私と同じように、事故のときに車内から投げ出せれてあの場所にいたということ。状況的に、ほぼそれしかありえない。
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