あの時からずっと、君は俺の好きな人。
私は話しかけるように言って微笑むと、墓標の隣に腰を下ろした。

そしてリュックの中から、なっちゃんに頼んで作ってもらったカレーパンを取り出し、墓標の前に置いた。


「なっちゃんのカレーパン大好きでしょ? 持ってきたんだ。食べてね」


水筒に入れていたお茶もコップに注ぎ、カレーパンの横に置く。


「ーー水野くん、元気?……って聞くのは変か。あ、私は元気にやってるよ」


きっと彼はここにいるはずだ。今日はお彼岸なのだから、亡くなった人が現世にいる日だ。

亡くなったあとの仕組みはよくわからないけれど、彼がここにいると私は思いたい。


「あ! そうそう! 内藤くんと坂下さん、付き合い出したんだよー! 坂下さんが内藤くんを好きなのは知ってたけど、内藤くんも坂下さんのこと気になってたんだって。水野くんは知ってた?」


2人が付き合い出したのは修学旅行が終わってすぐのことだった。

性格の違いが新鮮らしくて、今のところ上手くいっているらしい。


「あーあ。私だってね、みんなに水野くんとカップルになれそうって言われてたんだよ。ーーそれがまさかの展開でがっかりだよ」
< 221 / 229 >

この作品をシェア

pagetop