セカンド・プライオリティ

「すみません、せっかく話してくださったのに…」
「いえ、そんなこと。こちらこそお時間を頂き、ありがとうございました」

見送りにやってきた玄関で森さんに掛けた謝罪の言葉は、自分の心の中にも染み渡っていく。
拭いきれない情けなさのような、歯痒さのような気持ちとがごちゃ混ぜになって。

「あの、最後に一つだけ…頼みごとをしてもいいですか?」
「…俺に出来ることであれば」

美己の友人として。そう最後に付け加えた彼女の気持ちに答えるように、まっすぐに瞳を見つめ返した。

「美己が目を覚ました時に、そばにいてあげてくれませんか。今日だけで構わないので」
「え?」

予想外のその言葉に一瞬目を瞬かせた俺に、彼女は優しい笑顔を浮かべて。

「それじゃあ、失礼します」

見送った彼女の背中は、その頼みごとこそが情けない俺への大きなヒントだと教えてくれているような気がした。
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