セカンド・プライオリティ
「え!そんなんありました!?」
「ん?もう無くなっちゃったのかもしれないね。でもあそこにまだあるガトーショコラもおすすめだよ」
「わ、本当ですか!じゃあそれ頂いてきます!」

嬉しそうにテーブルに向かう彼女の様子を見送ってから視線を戻すと、立てた人差し指を口元に当てた大輔さんが意味ありげに微笑んでいた。

え?もしかして…

「秘密だよ?」
私の思考に気が付いた様子の大輔さんが、私にだけ聞こえるような小さな声で呟いた。

「美己ちゃんの中の霧みたいなものが、少しでも晴れますように」
「…!」

この人はどこまで人の気持ちに敏感なのだろう。

「美己ちゃんは、笑ってる顔が一番いい」
「あ…」
「何があったかはわからないけど、いつでもウェルカムだからね。…俺は」
「…っ」

冗談交じりにそう言った大輔さんの表情が、最後少しだけ真剣味を帯びた気がしたけれど…ポンっと私の頭に手を置いた彼はやっぱりいつもの大人な笑顔を浮かべていた。
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