Aliceーアリスー





ふと、三月ウサギがヤマネを起こす為に出していたヤマネにとっての究極のパワーワードを思い出す。



「チェシャ猫が。チェシャ猫がいるよ」


「ええ!?何だって!!?」



ヤマネの耳元で思い出したパワーワード〝チェシャ猫〟を口にすれは先程の寝姿が嘘かのようにヤマネはその場から飛び上がた。



「どこ!?どこなの!?ねぇ!アリス!アイツはどこ!!?」



そして首を縦横動かせる限りに動かしチェシャ猫を見つけようと怯えた様子で必死で探し出す。



「チェ、チェシャ猫がいるのはこのお屋敷の中であっても、今現在ここにはいないから!ごめん!落ち着いて!ヤマネ!」



そんなあまりにもパワーワードが効きすぎているヤマネを見て自分で招いたことだが流石に可哀想だと思ったので、今ここにはチェシャ猫はいないことをヤマネに慌てて伝える。

昨日も見ていたからわかっていたけど、いざ怯えている姿を見るとすごく悪いことをした気分になる。

いや、気分ではなく、本当にヤマネには悪いことをしてしまっているのだけれども。



「な、何だ……、よかった……」



私の言葉を聞いたヤマネは緊張から一気に開放された様子でヘナヘナと風船から空気が抜けていくみたいに安堵の息を吐いて膝から崩れ落ちた。


よし……とりあえずは落ち着いたみたい。









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