君と見つける、恋の思い出
「なんか可愛いね」
「憎めないよな」
似たような声があちこちから聞こえてくる。
さすが、愛嬌の塊。
それを聞いた叶花は拍子抜けし、ゆっくり瞬きした。
そして、その場に立ち上がった。
「櫻木叶花です! よろしくお願いします!」
叶花が頭を下げると、ほとんどの生徒が叶花を歓迎した。
そういうわけで、叶花はここに来やすくなった。
「カナちゃん、こんにちは」
俺と一つの机を使っていれば、そんなふうに挨拶をしてくる人が多数。
「こんにちはです!」
違和感しかない敬語を使う者が一名。
敬語を知らないと、こうなるのか……と頭の隅で考えながら、文庫本一冊を読み終える。
「蓮くん、今日水曜日だよ!」
叶花に言われて、叶花の背後にある黒板に視線を向ける。
端には今日の日付けと曜日が書いてあって、(水)とある。
すると、叶花の顔が目の前に来た。
俺は思わず仰け反る。
「放課後、逃げないでね!」
叶花はそれだけを言って、自分の教室に戻って行った。
「デートか?」