君と見つける、恋の思い出
あとから入ってきた先輩は、思ったより暗い顔をしていなかった。
嘘をついたか。
「古藤さん、さっきはごめんね。でも私、友達とあだ名で呼びあってみたいの」
「私じゃなくてもいいでしょ」
おっしゃる通り。
ここまで拒絶されているのに、彼女を諦めない理由がわからない。
「ううん、古藤さんがいい。私、古藤さんと仲良くなりたい」
あれだけ対立していながら、よくそう思ったな。
「……好きにすれば」
後輩が折れた。
叶花の粘り勝ち。
「やったあ! 古藤さんの下の名前、小夏だよね? こっことかどうかな!」
いつもの叶花に戻ったら戻ったで、うるさい。
後輩も同じように思っているのか、ため息を一つした。
「こっこ! 私にあだ名つけて?」
……ポーカーフェイスをする気はないらしい。
ものすごく、嫌そうな顔だ。
「……さくら」
安直な。
だが、それでも嬉しいらしく、叶花は浮かれていた。