冷たい幼なじみが好きなんです


別にいいだなんて、いいわけがない。


「よくないよ!!服じゃなくても、なにか別のものとか…!なんでもいいから言って…!!」


なにかお詫びをしないと気がすまないよ。


お詫びの気持ちはもちろんだけど、少しでも遥斗のなかの下がったわたしを挽回させたい気持ちも大きかった。


「……じゃあ…」


少しの間を置いたあと、遥斗はゆっくりと口を開いた。


じゃあ、なに………?


いったいなんていうんだろう………。


「俺以外の男をこの家に入れるな」


え……?


遥斗が告げた言葉は、あまりにも予想外だった。


遥斗以外の男をわたしの家に入れるななんて、なんでそんなこと……。


「わかったか」


「う、うん、わかった…」


まるで小さな子供みたいにこくこくと何度もうなずいた。


遥斗がなぜそんなことを言ったのかわたしには到底理解できなかったけど、それで遥斗の気がすむのなら絶対守ろうと思った。

そもそも、今までだって遥斗以外の男子をこの家に入れたことはないし、これからもない予定だ。


……遥斗は、百合ちゃんのことを家にあげることがこの先あるだろうけど……。


「…これ、サンキュ」


遥斗は包帯を巻いている右腕を少しだけわたしに向けてそう告げたあと、この家を後にしていった。


……すごく久しぶりにわたしの家にあがった遥斗。


久しぶりに少し話して、少しだけ触れた。


最後にお礼も言ってくれた。


どうしよう……めちゃくちゃうれしい。


遥斗にはもう、彼女がいるのに。


こんな喜んじゃ、だめなのに。


いつか前みたいに、また話せるときが来てほしい……。


そう願わずにはいられなかった。


……ちなみに、お父さんの誕生日ケーキを買っていないことを帰って来たお母さんにこっぴどく怒られたことは言うまでもない。

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