イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

ふたりきりの夜


「穂香。ただいま」

「おかえりなさい」

玄関で安藤を出迎えた私の頬に、彼の口づけが落ちる。まるで新婚さんのようなワンシーンが照れくさくて、ふたりで小さく笑い合った。

「なんかいい匂いがするんだけど」

玄関から部屋に上がった安藤が犬のように、鼻をクンクンさせる。

安藤から鍵を預かり、退社をした私が真っ先に向かったのはプラチナガーデン。安藤が帰ってくるのを待っている間に、夕食を作ろうと思い立ったのだ。

「カレー作ったの。食べる?」

「もちろん」

「じゃあ、用意するね」

安藤が部屋着に着替えている間に、カレーを盛りつける。そうこうしていると安藤がリビングに姿を現した。カレーが盛りつけられたお皿を安藤がローテーブルに運ぶ。

私と安藤との見事な連携プレイのお蔭で、あっという間に夕食の準備が整った。

ふたりで声を合わせて「いただきます」と挨拶する。するとカレーをひと口味わった安藤が「うん。うまい!」とすぐに声をあげた。

本当だったらもっと凝った手料理を作りたかったけれど、私が手早く作れる料理のレパートリーは数少ない。蓮くんを預かったときと同じメニューにもかかわらず、カレーを褒めてくれた安藤の気遣いがうれしかった。

もっとレパートリーを増やして、安藤においしい物を食べてもらいたいな……。

そんなことを考えつつ「ありがとう」と伝えると、カレーを口に運んだ。

安藤と一緒に食事をするのは子育て同居以来。あのときは私と安藤の間に蓮くんがいたけれど、今日はふたりきり。彼氏と彼女として向き合っているのが嘘のようで気恥ずかしかった。

< 121 / 210 >

この作品をシェア

pagetop