イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
Stage.8

予期せぬ異動辞令


朝陽との絆が深まった一泊旅行を終えた私たちを待ち受けていたのは、忙しい日常。多くの企業の給料日となる二十五日から月末にかけては、目の回るような忙しさに見舞われた。

そして迎えた九月。決算月でもある九月もやはり忙しく、とくに営業課の法人係である朝陽は土日も出勤しなければならないほど仕事に追われている。

私の両親に挨拶したいと言ってくれたものの、ふたりでゆっくりと会うことすらままならない今の状態では、日程を組むこともできない。

朝陽の仕事が落ち着いたら、改めて日にちを決めよう。そう思っていた矢先、それは起きた。

お風呂から出て部屋に戻ると、チェストの上に置いていたスマホが音を立てた。着信相手は朝陽。

ここ最近、忙しい朝陽とゆっくり話すことはおろか、メッセージも思うようにやり取りできていない。

早く朝陽の声が聞きたくて、急いで応答ボタンをタップした。

「もしもし、朝陽? 仕事終わった?」

『まだ』

朝陽が家に帰っているなら、久しぶりにゆっくり話ができると期待に胸を膨らませて尋ねた。
しかしスマホから聞こえてきたのは、ため息交じりの朝陽の声。

「朝陽、夜ご飯はきちんと食べた?」

忙しい朝陽の体調が気になる。

けれど朝陽から返ってきたのは、私の質問の答えではなかった。

『穂香……。俺、大阪支店に異動だって』

「えっ、嘘でしょ?」

『嘘じゃない。人事部から辞令が届いた』

銀行員は転勤がつきものだし、入社五年目である朝陽に異動の辞令が出てもなにもおかしくない。

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