イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

不本意なケンカ


「ただいま」

鍵を開けて玄関ドアが開く音とともに、朝陽の声が聞こえる。

「おかえりなさい」

玄関で朝陽を出迎えた私の腰に、彼の両腕が回った。

「穂香、今日はごめん」

私を抱きしめたまま、肩の上に額をコツンとつけた朝陽がポツリとつぶやく。

叱られた子犬のように、シュンと肩を落としている朝陽がかわいらしい。

「朝陽、今日は大変だったね。お疲れさま」

「ん……ありがと」

帰って早々に甘える朝陽の頭に手を伸ばすと、慰めるように柔らかい髪の毛をなでた。

思うように会えなくても、たとえ私たちの仲を邪魔する女性が現れても、私と朝陽の心はきちんと繋がっている。

顔を上げた朝陽とお互いの瞳を見つめて微笑み合った。

今からマンションを出ても、クリスマスイルミネーションは十分楽しめる。けれど私の心の片隅には、名前も知らない彼女の存在が刺のように引っかかったまま。

やはりこのまま、うやむやにはできない……。

「朝陽、あのね……」

「なに?」

朝陽の手を引いてリビングまで移動すると、ドアホンのモニターの前で立ち止まった。

「この人がケーキを持って朝陽を訪ねて来たんだけど、名前を聞いても教えてくれなくて……」

口で彼女の容姿を説明するより、この方が手っ取り早い。

ドアホンを操作して彼女の画像をモニターに表示させる。すると朝陽が「あっ!」と短い声をあげた。

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