イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

折角の四連休。お給料を自由に使える実家暮らしの独身女が、旅行にも行かずに同期のウチに泊まるのは、たしかに少し変かもしれない。

母親が不思議がるのも当然だ。

「弟の悠馬(ゆうま)は彼女とディズニーリゾートに泊まりで出かけているのに、姉のアンタは同期のおウチにお泊りか。色気がないわね」

母親の口から大きなため息がこぼれ落ちた。

同期の説明は詳しくしていない。それなのに母親は私が泊まりに行くのは“女の同期”のウチだと勘違いしている。

今さら同期が男だとは、さすがに言いづらい。ここは母親に勘違いしたままでいてもらうことにした。

「色気がなくて悪かったですね」

反抗期はとっくの昔に終わった。それなのに、つっかかるような言い方をしてしまうのは、母親の小言がうるさいから。

「ねえ、穂香。彼氏、いないの?」

「いません」

彼氏がいたら、同期のアイツのウチなんかにお泊りしません!と、心の中で毒を吐く。

「婚活してみれば?」

「私、まだ二十七歳だよ?」

入社して今年で五年目。銀行窓口業務の仕事にはやりがいを感じているし、上げ膳据え膳の実家暮らしは快適で、今の生活を変えるのは考えられない。

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