イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

カレー用の豚肉を選ぶ。しかし、お肉だけではカレーは作れない。

「ねえ、安藤。ジャガイモと人参と玉ねぎはある?」

「ない」

「そう。それじゃあ次は野菜コーナーね」

「ああ」

安藤と蓮くんとともに、野菜コーナーに足を進めた。

私と安藤はよつば銀行横浜支店で働いている。私は銀行窓口係、一方の安藤は営業課の法人担当だ。お互いが顔を合わす時間はほとんどない。それなのに今は一緒に食事のメニューを考えて、買い物をしている。

私たちって傍(はた)から見たらどんな関係に見えるの? 恋人? それとも夫婦? ただの同期だと思う人は、ほとんどいないはず。

なんだか変な気分……。

そんなことを思っていると、野菜コーナーにたどり着いた。ジャガイモと人参と玉ねぎを選び、買い物カゴに入れる。あとはカレールーを買えばOK。だけどカレーだけでは栄養が偏ってしまう。

なにかあと一品、と考えているとキャベツが目に留まった。人参とコーンを足せば、コールスローサラダが作れると思い立つ。

「ねえ、安藤。キャベツって外の葉っぱが緑の方が新鮮なんだって。知ってた?」

「いや、知らない。へえ、そうなんだ」

「そうなのだよ」

昨日、母親から聞いたマメ知識を安藤に自慢げに披露すると、しばしの優越感に浸った。

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