イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
安藤とふたりで作業すること二十分。思っていたより早く、ファイリングが終わった。競うように作業に没頭したことが、よかったのかもしれない。
「安藤、ありがとう。すごく助かった」
安藤が手伝ってくれなかったら、今もまだファイリング作業に追われていただろう。
感謝してお礼を伝えると、安藤が怪しい笑みを浮かべていることに気づいた。
「俺、寿司が食いたいなぁ」
「お寿司?」
「ああ、回らないヤツ」
「……っ!」
安藤がなにを言っているのか理解できなかったのは、ほんの一瞬。
ファイリングを手伝った見返りとして、遠回しにお寿司をおごれと言っているのだとすぐに気がついた。しかも回転寿司じゃないお寿司をねだるとは、図々しい。
悔しさのあまり声も出せずにいると、安藤がクスクスと笑い出した。
私をイジメて楽しんでいる安藤が憎らしくて、キッと彼を睨みつける。でも安藤の涼しい表情は崩れない。
「ほら。早く行こうぜ」
安藤はそう言うと、書庫から素早く出て行ってしまった。
「もうっ!」
自分勝手な同期のアイツにイラついてあげた声が、書庫に虚しく響いた。