お嬢様は恋をしません。
最後、ポツリと呟いた言葉は西条には聞こえていなかったようだ。



「とにかく。



奏多、準備しなさい。10分後に家を出る」




そう言って、西条はどこかに歩いて行った。




首をぐるりと回すとぼきぼきと音が鳴った。




「まだ寝たい…」



「諦めろ。莉緒のいうことは絶対。



それが労働時間外でも、だ」



「…はい」




俺は昨日、自分の部屋だと渡された部屋に置いた、カバンを開けて服を見繕う。



頭の色のわりには服は地味めだとよく言われたものだ。




「奏多、準備はできた?」




部屋の前で、イライラと足を揺する音が聞こえる。




「まだ5分も経ってねぇよ」




着替え終えて、部屋にある備え付きの洗面所で顔を洗い、部屋を出た。



「遅い。行くわよ」



なんだろ。女王、ご乱心。




「高嶋様。お気になさらないでください。



莉緒様もまだ寝起きなのです。



寝起きの機嫌の悪さはピカイチなのです」
< 20 / 139 >

この作品をシェア

pagetop