消える僕の前に、君が現れたら。
「穂積(ほづみ)」

名前を呼ばれて振り返った先には、さっきまで隣で授業を受けていた奴。

高校からの友達、川原(かわはら)。

僕より数m後ろから少し駆け足で何かチラシを持ってきた。

「何、そのチラシ」

「大学祭でミスコンとスタコンやるんだってよ、でる?」

「スタコン?」

ミスコンは、流石に分かるけど。

「ミスターコンテスト。ミスコンの男版。今週締切なんだってよ、俺貰っちゃった」

「配った人の目を疑ったね」

軽く笑ってやった。

「穂積は?貰ってないの?でればいいじゃん」

「避けてきた、でたくない」

「ええ。もったいない、かっこいいのに」

川原がけらけらと笑う。

「かっこよくないから」

僕の中でのかっこいいは、テレビとかでてる人の事を言うんだと思うけど。

スタコン?なんて面倒臭いし、何より目立つ。

目立つ事はほんと嫌いなんだよ。勘弁。

ひっそり生きて、周りの友達とやりたい事やれる大学生活でいいんだよ。

やりたい事なんて、そんな大それた事でも無いし。

僕には、それが無いから。




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