今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
「偏見だな……ふざけるな」
すぐ耳元で、囁くような怜士の声。
しかし、その声音は酷く冷たく耳に届く。
ぞくりとして、沙帆は首をすくめる。
恐る恐る目を向け見えた怜士の表情は急に神妙な面持ちで、沙帆は金縛りにあったように瞬きすらできなくなった。
「この間から気に食わなかったが……医者を一緒くたにダメ人間みたいに言うのは、迷惑な話だ」
「え……」
「まあいい。今日の話に乗ってみようって気が変わったら、連絡してこい」
急に声のトーンと変えて、怜士は口角を上げ意地悪く笑みを浮かべる。
ころころと変わる怜士の変化についていけない沙帆は、その場に呆然と立ち尽くしてしまった。
「戻るぞ」と先に去っていく怜士に声をかけられても、沙帆はしばらく池の水面をじっと見つめていた。