ハイド・アンド・シーク


「そういえば、昼間になにかトラブルでもあったんですか?営業部の主任と慌ただしく出ていきましたよね」

ふと思い出して尋ねてみたら、彼は「あぁ」と苦笑いした。
ポテトサラダを食べながら、あれはね、と話し出す。

「端的に言えばクレーム対応に追われてた」

「クレームですか」

「歯科医院の建設計画に俺も少し関わってたんだけど、そこの奥様がタバコ嫌いでね。担当営業もそれは把握していて、施工業者にも注意事項として上げてたらしいんだけど、工事中の現場にひょっこり現れた奥様が、タバコが落ちてるのを見つけちゃって」

……あぁ、それはなんだか、先のことが予測できてしまった。

「奥様が激怒された、と」

「まぁ、そういうことだね」

主任の話によると、現場の人たちもそれなりに気は遣って働いていたらしいのだ。タバコは吸っても、必ず吸い殻は綺麗に片付けてから仕事に戻るように徹底して。
しかし、タイミングが悪いというかなんというか。
偶然、休憩している時に奥様が訪れたものだから、片付けが間に合わなかったのだという。


「……で、こんなタバコの臭いがする歯科医院なんか、患者さんは来ないからやめるって言い出して。慌ててうちが直接出向いたって感じかな」

話を聞きながら、理不尽すぎるわけでもないが、タバコに関しては難しいところがあるなぁと感じた。
施工業者さんはわりと喫煙者率が高めだし、コミュニケーションのひとつといえばそうなので、吸うなという方が無理もある。
ただ、奥様からすればそれほど嫌なのだという、一種のこだわりのようにも思えた。

それに、完成後の建物にタバコの臭いがつくなんてことはないのだが、それを懸念しているあたりが対応しづらそう。

「それ、結局どうなったんですか?」

結果が知りたくて、答えを急く。

< 94 / 117 >

この作品をシェア

pagetop