ONE〜想いは一つ〜
初日の勤務をどうにか、終えた私は帰ろうと更衣室で着替えていた。
明日は、いきなり夜勤だし。
明日って言っても、今日になるのか。
ま、医師としても勤めてた時に比べると、勤務体系もましか。

「お疲れ!明日からよろしく!」

同じく、上がりの由香里が着替える為に更衣室に入ってきた。

「由香里、明日夜勤よね?お願いします」

まだまだ助けてもらわないと困る私は、由香里に頭を下げた。

「何言ってんのよ!無茶ぶりしたのはこっちだし。任せておいて。仕事に関しては何にも心配はしてないけどね」

そう言いながら、私達は病院を出た。

「あ、由香里。車じゃなかったら送ってこうか?」

「うそ、マジ?助かる。ギリギリ入った急患の対応で時間に上がれなかったからタクシーで帰ろうと思ってたのよ!いいの?」

「いいよ。私車だし。これくらいで、恩に着せないわよ」

「ありがとー」

そう言いながら、一般の駐車場に回ろうとした。

「こっちに止めたんだ?」

「だって、その場で帰るつもりだったじゃない?」

「あ、そっか。って言うか、あんたの車何よそれ!」

何って、何?
私の車を見て驚いている。

「どうしたの?」

「どうしたの?じゃないわよ!ベンツじゃない!しかも黒とか!」

ん?
私が乗ってたらおかしいのか。

「看護師に買える車じゃないって!」

「あ、だ、だって、ほら。高いって言っても、無理したら買えるじゃない?」

「時間のない、看護師が無理して買うか?普通」

「あ、それもそうだね…」

車まで頭にないよ。
これでも、仕事頑張って買った車なのに。
夏帆のやつ。

「ま、ローンでって逃げるよ」

聞かれたら。

「それが賢明かもね。けど、いい車よね〜。私はどう頑張っても買えないわ」

うーん。そうなのかな。
そう思いながら、車に乗り込んだ。

そんな私達を上から見てた人が、いたなんて、この時の私達は知るよしもなかった。
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