イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「そんなこと! わ、私は直接殿下にお会いしたことがありませんので比べられませんわ!」

 必死なアディの声が上ずるのを、ルースは面白そうに見下ろしている。

「比べる必要などありません。私の方が絶対に男前です」

「きっと私は殿下の方が好みです!」

「強情ですね」

「ルースがおかしいのです!」

「まあ、いいです。いずれ……」

 独り言のように言って硬直するアディにふいに背を向けると、ルースはスタスタと歩き出す。

「さあ早く部屋へ戻りますよ。あまり城の中をふらふらしておられると、下手をすると反逆罪を疑われてしまうかもしれません」

「反逆罪?」

 何事もなかったような様子のルースに、警戒して距離をとってついていきながら、アディは眉をひそめた。
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