イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「ただ、そう疑われることもあるかもしれない、という事です。場合によっては衛兵に捕縛されることもあるかもしれません。どうか、言動にはお気をつけください」

 やけに真剣なその言葉が、アディは気になった。

「王太子殿下を暗殺しようなどと考える者がいるのですか?」

 ルースは答えない。次に彼が口にしたのは、アディの疑問の答えではなかった。

「会いたいですか?」

「テオフィルス様に、ですか?」

 ルースが頷いたので、少し考えてから、アディは、はい、と答えた。

「……会えますよ。あなたなら、いつかきっと、ね」

 ちらりとアディに向けられたその瞳には、月の光が淡く映っていた。

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