イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「お知り合いになったのでしたら、いずれ本人が話すでしょう。あの子は嘘をつくような子ではないので、いつかお知りになることができると思います。……では、私はこれで失礼しますね」

 いつの間にか二人は、アディの部屋の前まで来ていた。

「ありがとうございました」

「いえ。……アデライード様」

「はい?」

 少しためらってから、マルセラは言った。

「ルースは、今はあなたの専属執事なのでしたわね」

「はい」

「あの通りの方ですけれど……どうか、よろしくお願いいたします」

 深々と頭を下げるマルセラに、アディは慌てて言った。

「いえ、こちらこそ彼にはいつもお世話になっていて……」

「ルースにあんな顔をさせることのできるお方は、そういないと思います。きっと彼にとって、あなたは特別な方なのでしょう」
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