エレディンの乙女と青龍の守護者



『もう泣いてはいないな。』


カティナを配慮しての言葉だった。
冷徹の皇子と呼ばれるシュナインが、誰かを思い遣るなどとは予想外の言葉に、ウェルロイドは耳を疑ったのだ。
驚きで固まる自分の腕の中、カティナはふるふるっと首を振った。

「泣いていないわ。」
シュナインに対し語気を強める彼女にも驚いたが、
ふっと笑うように和らいだ声で
『ならばよい。』
と答えたシュナインの変化に鳥肌が立った。

なんだ?これはどうしたことだ?

シュナインの一族は皇統を継承するため、他者を近くに置かない。重用しない。
その彼ら一族にとって乙女もやはり国家安泰の基盤を盤石とさせるための手段のひとつだ。

そのシュナインがこのような姿を見せるだろうかー?
目的は?
祝福以上の何かのためかー?

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