ホットホットドリンク
「相川? ぼーっとしてないで、テストやるぞ」

意識が飛んでいっていたひまりを引き戻したのは先生の声だった。

ひまりの顔を覗き込むようにしている。

ひまりはなにも考えずに先生の頬に手を伸ばしていた。

先生のコーヒーのように黒い目が好き。

無意識に先生を引き寄せて、その瞼に唇を押し当てていた。

うっすらとコーヒーの匂いがした気がした。

ぼーっとしながら先生から手を離すと、先生はぽかんとした顔で硬直していた。

その顔を見つめて、ひまりは自分がしでかしたことに、初めて気がついた。

「……え? えっ、えーっ!? せんせー、わたし、今なにした!?」

「………………」

「ちょっと、せんせー! なんとか言って!」

硬直が解けない先生を見ていられなくて、ひまりは思い切り椅子を回した。

一瞬で熱を持った自分の頬を両の手で挟む。

「あの、あのね、違うの! なんというか、自分でもよく分からなくて、手が勝手に……! せんせー、お願いだから軽蔑しないで!」

「……………………」

「せんせー!」

一言も発しない先生が怖くて、ひまりは彼の方を向けない。

そのせいで、赤くした顔を隠している陸を見逃すことになった。
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