溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜
「それなのに、ある日突然、再会した父親が自社の社長で、『会社を継いでほしい』なんて言われて、どこか他人事みたいに気持ちが追いつかなかった。営業の一社員が会社を担う役職に立つなんて考えたこともなかったし、社長を父親だと思えないとも感じた」


自分の身に起こっていることなのに現実味はあまりなかったし、向上心はある方だと自負していたが、父親の跡を継ぎたいともまったく思わなかった。
ところが、そんな話を持ちかけられた翌朝に出社した俺は、自分の中にあった考え方が変わっていった。


その日は、名古屋から戻った翌日。
心が動き始めたのは、企画部の社員や莉緒たちと足りない分のサンプルをラッピングしていた時だった。


ミスをリカバリーするためにみんなで全力を尽くし、なんとか事なきを得そうだな……と感じた俺は息をついた。
その直後、自身のミスを謝罪するために頭を深々と下げる彼女の姿を見て、ふと頭の中にそれまでには考え至らなかったようなことが浮かんだ。

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