極上ショコラ〜恋愛小説家の密やかな盲愛〜
元カレのために作った生チョコは、アルコールに弱い私にはラム酒が強過ぎて、頭がクラクラと揺れるような感覚に襲われた。体を包む感覚が酔っている時のそれと似ているのは、きっとそのせいに違いない。


体の奥底から込み上げてきた行き場のない熱が、私のなかに溜まっていく。


熱を持て余しながら肩で息をする、私。
それを満足げに笑いながら見下ろす、篠原。


妖艶な笑みはやっぱり美しく、いつも第二ボタンまで開いているシャツから覗く胸元は“男”を思わせる。そして、それらに囚われてしまう私は、なにかがおかしい。


「じょっ、冗談にも程がありますっ……!」


精一杯睨んで告げてみても、彼が顔色ひとつ変えないのは、たぶんその声が震えていたから。


「そんな顔もするんだな」


満足げな表情の篠原が、また顔を近づけてくる。


「ほっ、本当にやめてくださいっ‼︎ これ以上やるなら、編集長に言いますよ⁉︎」


咄嗟に口をついて出た言葉に、目の前の端正な顔が一瞬だけ驚いたような表情を見せて動きを止めた。


だけど──。

「……どうぞご自由に。まぁこれから俺にされることを、お前が口にできるとは思わないけどな」

彼は、涼しげな表情で言い放って、すぐにまた口元を緩めて笑った。

< 17 / 134 >

この作品をシェア

pagetop