あなたが居なくなった日。
おかずを摘んでいた箸が止まった。
まだ口に残っている玉子焼きを咀嚼している途中で口が止まった。
そこからは音しか流れ出てこないのに視線はスピーカーを見つめている。
耳はもちろんその音色を拾うことに躍起になっている。
自分が立てる音すら邪魔に思えて呼吸すらも危うく止めかけた。
その音色はそれほどまでに綺麗だった。
「ふーうっ……」
演奏が終わると自然とため息が漏れた。
ただ一曲を聴いただけなのに何か大きいことをやりきったかのような達成感が思わず溢れた。