旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~

 なんとか挨拶を終えて席につくと、すぐに左隣に座る、同じく絵付師の麻生佳奈(あそうかな)さんが自己紹介を始めたのだが、何故か宝来部長は私に視線を送り続けている……気がする。

 私、早速なにかやらかした?

 どぎまぎしながら、会議用テーブルの下で小刻みに震える両手を再度強く握り締めた。

 どう見ても二十代は私だけ。皆からは若々しさも感じられるが、それだけではない中堅社員らしい風格が漂っている。

 どうして私がここにいるのかいまだに分からない。

 つい先日、いつも通り工房に出勤した私と佳奈さんに、宝来部長が企画した新規事業のチームに加わって欲しいと通達があった。

 企画内容は、私と佳奈さんが通信販売の番組で絵付けを披露するというもの。いわゆる、テレビショッピングだ。

 宝来陶苑は現在直営店に本社店(ファクトリーショップ)、ミシュランガイドにも掲載されている、ラグジュアリーホテルのベルカントホテルがある。

 直営店はそれだけなので、必然的にオンラインショップでの売上が高いのだが、今回の企画はそれを後押しする形となる。責任重大だ。
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