旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~

 宝来部長は微笑んで、壊れ物を扱うように手首をそっと手放した。

 木々が激しく揺さぶられているような感情が胸に広がり、目の前にある美しい顔を見ることができない。

 どうしてそんな甘ったるい表情を見せるの? 女性であれば、誰に対してもそうなの?

 顔に集まった熱を晒したくなくて、手で覆いたくなる。

「そんな顔をされると、離れがたくなるな」

 歯の浮くような台詞にぎょっとしながらも、刺激された乙女心はいとも簡単にきゅんっと反応する始末。

 ドキドキしながら宝来部長に視線を戻せば、彼は艶っぽい瞳で真っ直ぐに私を見つめていた。

 この状況、本当に意味が分からないよ! お願いだから早く解放して……!

 まるで心の叫びが聞こえたかのようなタイミングで宝来部長が立ち上がった。

「今日はありがとう。もう帰っていいから」

 私も慌てて立ち上がって深く頭を下げた。上半身を起こすと、宝来部長はすでに背を向けて扉に向かっている。

 石鹸のようなふんわりとした彼の残り香を嗅ぎながら、唖然とした私はしばらくその場から動けなかった。

< 21 / 180 >

この作品をシェア

pagetop