彼と彼女の花いちもんめ~意地悪王子の包囲網~
プロローグ
小学校の頃、連絡帳の保護者向けコメント欄に書かれていたのは・・・

“早とちりで誤解をしてしまう事が多く、その為注意力が散漫になり、怪我をする事も良くあります。ご家庭でもしっかり見てあげてください。”

当時のあたしをもっとも表す内容だった。

そして、それは、今も変わらない。


あたしには、誰にも言えない黒歴史がある。



森林公園を抜けて猛ダッシュ。
後ろは絶対に振り返らない。
今のあたしは誰より早く走れる。
だてに陸上を高校三年間続けていたわけじゃない。
ヒールをものともせずに入口も突っ切って、社員専用入口へ向かう。
もう誰にも会いたくなかった。
というか、今日という日自体、無かったことにしてしまいたかった。


それくらい、あたしは恥ずかしかったのだ。

早く、早く、早く。
その気持ちだけで、前へ前へと足を進める。
が、後ろから蹴り上げるべき右足が、突然いう事を聞かなくなった。
「っきゃあ!!!」
可笑しい、と思った時にはすでに遅く・・・
マンホールの溝にはまったパンプスはそのままで、あたしの右足は大きく蹴り上がっていた。
あたしの身体は次の瞬間中に浮いた。
そのまま、でんぐり返りの要領で、社員専用入口横の植木へと突っ込んだ。
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