彼と彼女の花いちもんめ~意地悪王子の包囲網~
絶妙の角度で首を傾げてさも困っている素振りを見せる。
これで、大抵の男は、クラっとヤラれて、あっさり引き下がるはず。
が、目の前の相手は違った。
まじまじとあたしの顔を見て、それから植木を見下ろした。

「そんな距離まで飛ぶ?」
「っえっと・・・風に・・・」

突っ込むなよそんなトコ!!
ここは手伝おうか?とか言って、さっさと帰れよこの馬鹿!

曖昧に笑ったあたしの視界の隅に、置き去りのパンプスが飛び込んできた。
マンホールの溝に嵌まったままのパンプス。
あれに気づかれたら一環の終わりだ。

祈るような気持ちで視線を逸らす。
と、あろうことか、その男はあたしが追っていた視線の方へと顔を向けた。

オブジェのように直立する7センチヒールを見つけて、一瞬唖然とした後で、
もう一度あたしの方を振り返る。

それから、納得したように一人で頷いて、生暖かい笑みを浮かべた。

「ああ・・・」

ああじゃねぇよ!!!!!

「あはは・・・」

あたしは乾いた笑いを浮かべるしかない。

「あの、お気遣いなく」

混乱気味のあたしがとにかく一刻も早く立ち去って欲しくて言った一言を受けて、彼は動いた。

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