彼と彼女の花いちもんめ~意地悪王子の包囲網~
人生初めての、女子会
「えーっ、そーなの、恋愛未経験?美人なのに勿体ないわー」

「選び過ぎなんでしょー仁科ちゃん。ある程度のとこで妥協しないと、彼氏出来ないよー」

混み合うコーヒーチェーンの店内で、丸テーブルを囲んでの告白を受けて、松井さんと今村さんは、そんな感想を述べた。

ひた隠しにしていたわけじゃないけど、生まれてこのかた誰とも付き合った事が無い女子というのは、どっかしらに欠陥があるとか思われがち。

マイナスイメージを持たれる事必須の機密事項を、あえて暴露する必要も無し。
そう思っていた。

付け加えれば、あたしのこれまでの人生で、プライベートをぶっちゃけられる女友達というのはいたためしがなかった。

「別に彼氏は要らないので」

暗黒時代を端折って、小さい頃、男の子に苛められてて、それ以来付き合うとかはちょっと・・・と濁したあたしに、松井さんが真顔で身を乗り出して来た。

「子供の頃の頃は、トラウマかもしれないけど。悪い人ばっかじゃないわよ?」

「そうですね」

あたしは笑顔で頷いた。
南野さんは、あたしの黒歴史のなかで唯一輝く王子様だった。
後にも先にもきっと、あんな人には会えない。

「ねえ、じゃあためしにどんなタイプが好みか教えて?
あたしの男友達とか、紹介するし。
仁科ちゃん美人なんだから、すぐに男が名乗りをあげるって」

今村さんも乗り気の様子だ。
あたしは眉根を寄せて、好み=理想の相手=南野さんを思い浮かべた。

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