彼と彼女の花いちもんめ~意地悪王子の包囲網~
その答えを受けて、松井さんと今村さんは、驚いたように目を見張った。

「なんだ、わかってんじゃない」

「みたいですねー。だったら、話が早い」

二人揃ってうんうん頷いて、両側から遠慮なくあたしの肩を叩いてくる。
わけが分からず成り行きを見守っていると、松井さんが人差し指を立てた。

「うん、そうねー。恋の病の最大の特効薬は、告白よ」

「ですねー。仁科ちゃん、ここは勢いで、柿谷さんに告白しちゃおう!」

なんですと・・・?

「・・・・・え?」

何でそこで告白になるのか、全く理解出来ないですけど。
あたしのコレは病気で、恋の病なんかじゃ・・・

ぽかんと呆けるあたしの顔を覗き込んで、松井さんが真顔になった。

「その人を前にすると、緊張して、上手くしゃべれなくて、ドキドキするっていうのは、
恋よ!!
あんたは、柿谷さんを好きになってる!」

「嘘!!」

「嘘じゃないよー。だって、この間までは全くなんともなかったのに、急に顔見るのが怖くなったのは、意識してるっていう証拠だし」

「えええっ!で、でも・・」

「間違いないわよ!恋よ!恋!!」

「可笑しいと思ってたんですよねー。柿谷さんが来ても、すっごく大人しいし、かと思えば、急に大声上げて離れたり」

「メールの返信考えて黙り込んでたから、まさかとは思ったけど、まあ、典型的な恋煩いよねー」

「こ・・・恋?」

南野さんにしかときめかなかったあたしが、恋?

「あり得ないですよ」

「じゃあ、なんでメールの返信いつもみたいにすぐ出来ないの?」

「文章とか。ちゃんとしないとだめじゃないですか!」

「なーに言ってんの、仁科ちゃん!この前まで、迷いもせずに1分で返信打ってじゃん。
相手に少しでも良く思われたいって思うから、文章悩むんだよー」

「言い回しで迷ったり、絵文字で悩んだりねー」

「四苦八苦するのもまたいいんですけどねー」

「ちょっと!あたしは全然よくないですっ」

四苦八苦なんて以ての外。
寝不足で肌は荒れるし、変な汗は掻くし良い事なんてひとつもない。

「その恋の病をどうにかしたいなら、告白しちゃいなさい。
向こうは、それを待ってるんだから」

待ってる、って言われても・・・あれだけ好きにならない、と啖呵を切った以上
告白なんて出来る筈ない。

楽しそうに微笑む松井さんと今村さんを前に、

あたしは途方に暮れて溜息を零した。
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